狸仙近現代史  改訂版

第二話 堀川勢力の淵源と根底 

 3 山地シュメルと海洋シュメル

狸仙の私見は、シュメルに山と海の2系統があると考えます

「山地シュメル」は、メソポタミア北部山地に出現した鉄器を用いる騎馬民族で学者はツラン族と呼びますが、「山地騎馬民ツラン族が南下してシュメル人になった」とするのが第1説です。これに遵えば、本来ツラン族の言語の膠着語が、シュメルにもたらされたことになります。第2説はその逆で、「膠着語のシュメル語が山地騎馬民ツランに広まった」との説ですが、「メソポタミア南部の潟部に渡来した海民がシュメル人になり、膠着語をもたらした」と謂うことになります。

「海洋シュメル」は、メソポタミア南部の潟部に突如出現した航海民族ですが、それ以前が判らないのです。移住・征服民であることは確かで、海を渡ってきたとの説がありますが、何処から来たのかはわからない。極端な説は宇宙人説です。

ともかくシュメル人とは、人種概念というより言語学的概念で、シュメル語の呼称は妥当としても、「民族としてのシュメル人は存在せず、正確には言語学的シュメル人と呼ぶべきである」とする学説もあります。民族集団としてのアメリカ人は存在しないが、言語族としてのアメリカ人が存在するのと同じで、本稿はそのような言語学的概念としてシュメルを捉えることとします。

シュメル文明が巨石太陽文明であったことは確かです。人類文明にシュメル文明が果たしてきた役割の大きさから、シュメル史は現状の優勢民族による文明の本家争いの対象となっています。したがって、近来発見された資料の読み替えや改竄も推定され、民族の勢力争いの影響がある現状の学説は、盲信してはならないことに留意すべきです。

山地シュメル海洋シュメルとの関係はまだ分りませんが、「南船北馬」「南北朝」に言い表されて、地球上の至る所に観られる南北問題の淵源はシュメルにあると断じて良く、結局、世界史の基本的動因は、南北両勢力を巡る地政学的な緊張関係と思われます。