「やっぱり贋作だった武生市の「佐伯祐三」騒動」
 「粗削りだが、佐伯祐三の本物に間違いない」という1年前の評価が、今や「100パーセン
ト贋作とはいわないが、それに近い」と180度転回した。美術界の大御所といわれる先生方
の御託宣も、当てにならないことおびただしい。
  岩手県遠野市在住の女性、吉薗明子氏から福井県武生市へ寄贈された38点の「佐伯祐三」の
絵画と関係資料の調査にあたっていた専門家たちが今回、出した結論は「贋作」。
理由は、以下のとおりだった。
  「手紙や日記の筆跡が佐伯のものと違う。海外からの郵便に押されていたスタンプが、当時
は使われていないものだった。そして、寄贈者の父親で佐伯の支援者だと称する吉薗周蔵の
フランスへの渡航記録が発見できず、経歴も不明」
  もっとも、関係者の一人が指摘するには、
  「考えてみれば当然の話です。周蔵は、贋の資料に書かれているような精神科医などでは
なく、本当は、戦前は東京で市電の運転士、戦後は千葉で豆腐屋やお灸師をしていたのです
から。そんな人が佐伯祐三のパトロンだとは、いかにも不自然です。それより問題は、寄贈
者の吉薗明子氏が、佐伯だけではなく、“父親の遺品の中にあった”と称して青木繁の作品
なるものまで、あるコレクターに売っていることです。しかも、今回の調査委員会の座長で
先日亡くなった美術評論家、河北倫明氏の“鑑定書”まで付けてね」
  どうやら、この女性、怪しげな絵画の扱いにかけては「天才的」らしいのだ。





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