●贋作鑑定に真っ向反論
●佐伯画伯作品を贈られた武生市
福井県武生市が寄贈を受けた洋画家、佐伯祐三(1898〜1928)の作品38点のうち「モランの
風景」(仮題、20号)について、画商の鑑定機関「東京美術倶楽部鑑定委員会」(三谷敬三委員
会長)が、絵の具が酸化していないことなどを根拠に贋(がん)作と認定していたことが、25日
わかった。同市が調査を依頼している選定委員会(座長 河北倫明・美術館連絡協議会理事長)
は「贋作とする根拠は作り話」と真っ向から反発、真贋論争に発展しそうだ。


●選定委「商業的な作り話」
●画商の機関「ここ数年の作」
岩手県遠野市の主婦、吉薗明子さん(50)が父と親しかった佐伯の作品を100点以上秘蔵。
小泉剛康市長に知人を通して「まとめて保管してくれるなら」と、話があり、今年11月、38点が寄贈された。
問題になったのは、「モランの風景」。東京美術倶楽部は、美術商から同倶楽部に持ち込まれた際、
美術評論家の山尾薫明氏ら計10名で鑑定委員会を開いて調査した。
委員らは「一目で偽作とわかった」が、念のため科学的調査をした結果、ほかに
▽画布を打ち付けたくぎがさびていない
▽最近の画布にしか使われていないテトロンが含まれていた
―として、同4月の定例委員会で「ここ数年間に制作されたもの」と判定、美術商に通知した。
また、今月初めに、武生市からモランの風景を含む5点の写真を付け「鑑定をしたことがあるか」と照会を
受けたので贋作と連絡したという。市は「照会したことはない」と否定している。
同市の委託でこの絵を修復した絵画修復家、杉浦勉さん(京都市左京区)は、
▽絵の縁は紙で覆ってほつれないようにしてあり、繊維は取れないはず
▽佐伯はくぎを抜いて丸めて送っており、額装されたのは最近
―と指摘。「贋作はナンセンス」という。
河北理事長は、「鑑定委員会は、佐伯作品がたくさん出回ると絵画市場が混乱するから、そんなことを
いっているのではないか。市側は、商業的なことにわずらわされず、きちんと研究してほしい」と話す。
吉薗さん所有の作品については、遠野市でも寄贈話があり、その時も真贋が問題になった。
吉薗さんは「武生へ寄贈されると作品が手に入らなくなるので、寄贈をつぶそうとしている人たちが
いるのではないか」という。
市は、寄贈を受け、旧公会堂を3億7千万円で「佐伯祐三記念美術館」に改修することを決定。

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小泉市長の話「贋作だといわれても、どういう調査なのか聞いていないので、何ともいえない。
選定委員会の先生の意見を重視するのが、市としての道。科学的な鑑定は、論争が高まればしないこともない」

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