◎これまで経緯の総括   ―    年表


*ばらばらで分かりにくい、両陣営のやり取りをまとめてみます。

●東京美術倶楽部鑑定委員+山尾薫明氏
*「吉薗佐伯」は佐伯作品ではない。理由は、
    1)キャンバスがテトロンを含んでいる
    2)絵の具が酸化していない
    3)画布を打ち付けたくぎは顕微鏡検査でさびでいない
*実施した科学的鑑定の方法は、(偽作家に)対応されるので明らかにできない。

○杉浦勉氏(修復家)
*同倶楽部がどれほど佐伯作品を見ているか疑問。佐伯がパリから吉薗周蔵氏に作品を送った際、くぎは
   抜いている。キャンバスの素材にしても本当に見ているのなら麻であることは一目りょう然。武生市に寄贈
   されてしまえば、同倶楽部が吉薗コレクションを扱わせてもらえないということだ。半年もたてば、自分たちが
   言ったことがいかに悲劇か分かるだろう。

○歌田眞介勉氏(修復家)
*作品完成後すぐ木枠から外してしまうこともあるから、さびがないからといって、最近の作品とは断定できず、
   また絵の具の酸化具合からも年代は分からない筈。決め手となるとすればキャンバスの繊維だけではないか。

●三谷敬三氏(東京美術倶楽部会長)
*武生市が公開した作品のうち、一点は我々の見識として偽作と判断したものと一致した。武生市が独自の
   判断で購入することは自由だが、我々は一連の作品は取り扱いません。
*われわれは取引市場を持っており、佐伯の作品も昭和52年から何回も鑑定している。今回は額から外し
   素っ裸にして科学的調査を含め慎重を期した。わが国に鑑定権などないのだから、どなたが鑑定書を
   出しても自由。しかし自分らの鑑定は業界とコレクターを守るために真剣に行ったものだ。

●長谷川徳七氏(日動画廊社長)
*見た瞬間に贋作と分かったが、約2ヶ月間、科学的にも慎重に検査した結果、すべて偽作と鑑定した。

○河北倫明氏(美術評論家)
*画商は印象判断で贋作という。佐伯作品の価格政策上の立場から、未公開作品を流通市場に入れない
   ために、一点だけ贋作扱いにしたものであろう。

○富山秀男氏(京都国立近代美術館館長)
*同倶楽部に持ち込んだ修復家のレポートが公開されていない。自分は主観的に真作と認める。今後は徹底的な
   真贋調査をして、こうした指摘を受けないようにしたい。

●朝日晃氏(美術評論家)
*二十数年間、佐伯の研究を続け、遺族らすでに亡くなった関係者からも話を聞いているが、佐伯の周辺で
   吉薗という名を聞いたことはない。税金で絵を買う以上、武生市は慎重に科学的鑑定などを行うべきだった。

○吉薗明子氏
*本物でなさそうだと鑑定されたことは知っているが、(真贋問題は)河北先生たちに任せている。

○小泉剛康氏(武生市長)
*(作品に対して)いろんな声が出るのは当然。ただ、私としては選定委員の意見に重きを置き、尊重する。
   同倶楽部の判断の根拠が分からない。今後科学的鑑定を行うのも一つの方法だ。
*河北倫明氏ら選定委と相談して今後の対応を検討したい。ただ、権威ある五人の方でつくる選定委員会に
   「研究に値する」と判断していただいたのだから...。

●長谷川徳七氏(日動画廊社長)
*ただ、絵だけ非常に稚拙であるというのが、われわれにとって救いです。(笑)余りにも下手くろな偽物である
   から、まあ騙されるのは、ほとんどいないだろうと(笑)・・・もちろん業者が騙されるはずはありません。

○富山秀男氏(京都国立近代美術館館長)
*非常に乱暴なことを言うと、拙いんです、絵としては(笑)。習作というより、もう本当だったら捨てる
   ほどのものがあった、ということは認めるんですが・・・こんな下手な絵をね(笑)偽物をつくるものか、逆の見方を
   して調べて見る必要があると思う・・・。

○河北倫明氏(美術評論家)
*(三谷、長谷川ら東美からの陳情を受けて)東美の鑑定方法は独自のもので、それはそれで良い。
   持ち込まれた16点の写真の作品と武生寄贈品とを比べると「モランの風景」の一点しか重複していない。
    1)美術市場を混乱させないため、寄贈絵画と資料を市場に出さず、凍結すること
    2)寄贈絵画38点から数点選び、第三者機関で科学的な調査をすること
*美術倶楽部の鑑定作品以外のものも多数寄贈されるわけだから、武生市としてはこのまま(美術館整備など)
    進めればよい。作品を武生から散らさず徹底的に調べ、いろいろいわれていきた佐伯の全体像について
    決着つけた方がよい。

●三谷敬三氏(東京美術倶楽部会長)
*偽作の判断を下した経過を正確にお伝えした。武生市が(真作と)信じるというならそれでも結構。武生市の
   判断にゆだねるだけです。

●朝日晃氏(美術評論家)
*市から申し出があれば、いつでも手紙を資料として提供する用意がある。

○富山秀男氏(京都国立近代美術館館長)
*(個人的見解だが)早く鑑定した方が良い。一般公開も先の方が望ましい。

○富山秀男氏(京都国立近代美術館館長)
*山発コレクションはすべて吉薗家にあったことになる。

●朝日晃氏(美術評論家)
*山発の遺稿集に「晩年の佐伯作品は、すべて収集することができた」とあり、寄贈作品と山発コレクションは関係ない。

○富山秀男氏(京都国立近代美術館館長)
*吉薗資料や作品を全部見ないで「疑義がある」といえるのか。山発コレクションと無関係と断定しているが、きちっと
   証明できるのか。自分は今のところ本物説だ。


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